【養生】 休める or 動かす?治癒に向かう考え方について
今回は、体の不調が治癒に向かうために必要な静養、動養という2つのプロセスについて、ローリング療法の視点から解説していきたいと思います。
養生
養生(ようじょう)という用語があります。「健康に注意して元気でいられるように努めること、病気や怪我の回復に努めること」という意味です。(実用日本語表現辞典) 何か不調を抱える人に対し「無理せず養生してくださいね。」と労いの言葉をかけたりします。このように「養生する」という動詞で用いると、人が意識的に元の健康を目指すという行動を意味します。
静養
一般的に、病気や怪我から回復するには、まず極力体を動かさないように安静にするかと思われます。これを別の言い方で現すと「静養」です。風邪をひいて熱があったり、打撲をして腫れていたりすると、その熱や腫れが治ってくるまでは、しばらくじっとし、バタバタ動き回らない方が早く治っていく感じがしますよね?これは医学的にも体を治癒させるために正しい行いと言えます。
動養
しかし、体の症状によってはただじっと休んでいるよりも体を動かした方が調子が良くなる場合が多々あります。動かすことで体が健康に向かうことを「動養」といいます。これは造語ですが、英語で言うactive rest(=積極的休息)と似たような考え方です。ただし、筋トレやマラソンのような大きな負担のかかるものは運動(=workout)であり動養ではありません。疲れない程度に体を動かし、すこしずつその量を増やしていくのです。
この時、動かすのは筋肉や関節だけではありません。体を動かすことで血液や体液(水分)を動かされるため、循環が良くなり体の回復がもたらされます。
静養と動養の使い分けは?
静養していると、体内では筋肉の活動低下により血流が低下していきます。前述のように熱や腫れがある急性期のような場合は、動かずアイシングなどをして血流を低下させた方が痛みの引きが早いです。
一方で、何週間何ヶ月何年もの間しつこく続いている慢性化した痛みに対しては、静養しても効果的でないことが多いです。痛いだけではなく、同時に関節や筋肉が硬くなっているケースでは、血管が細り、血流が悪くなっているため治らなくなってしまっているので、温めるなどして血流を良くしなければなりません。
アイシングは血流を止めるという点から静養と言え、また温めることは血流を促すという点から動養と言えるでしょう。
怪我の炎症を治していくには、その怪我の時期を見極め静養から動養へと適切なタイミングで切り替えなくてはなりません。
Motion is Lotion(運動は潤い)
人間の体は動くために造られています。じっと同じ姿勢でいるのは体にとって多くのデメリットをもたらします。脳が神経に指令を出し筋肉が動くと思われがちですが実際は違います。体(筋肉)を動かすことで血液が動き、血流にホルモンやサイトカインなどの物質が溶け込み脳を含む各臓器に伝播されることで、体が正常に機能するのです。
とにかく体(筋肉)はじっとしていることが苦手です。運動不足で病気になり亡くなることは多くありますが、動き過ぎて病気になったり亡くなったりすることはほとんどありません(アスリートは除く)。人間は動き過ぎると疲れて勝手に体が止まります。そして眠たくなります。夜不眠で困っていると言う方の生活習慣を聞くと、多くの方に共通しているのが日中の運動量が少な過ぎることです。そのような方にアドバイスさせていただく最善策としては、とにかく動くことです。20分以上のウォーキングなど、有酸素運動がおすすめです。
ローリング療法はローラーを使用し筋肉などの組織を転がすことで、流れの悪い血液や水分を押し流します。これはちょうど運動をして筋肉が使われた(収縮する)ときにポンプの働きをして血流を促進することと同じことです。ローリングで筋肉は鍛えられませんが、血流を改善する効果は十分期待できるのです。血流を動かし、筋肉・関節が動かしやすくなり、そして運動機能が高まる。これがローリング療法的動養とも言えるでしょう。
まとめ
まとめると、体を養生するには静養と動養、二つ方法があります。休めるか動かすか、それぞれ適切なタイミングで選択する必要があります。当院におきましても、ご来院される患者さんにとって今どのタイミングなのか?を常に心掛けて施術に当たらせて頂いております。
痛みや疲れは「気のせい」ではありません。決して我慢せず養生に努めましょう。